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評価:
川島 博之
文藝春秋
¥ 1,150
(2009-03-26)
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3735位
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食糧自給率41%は危機的かどうか。
否、という専門家がいる。もともと工学系がご専門だったのだが、たまたまシミュレーションに関する専門家が不在で声がかかったところから、農業系にはいったのだとか。だから、データ重視で議論を展開する。さらに、「日本」の「農業」事情だけの視点だけでなく、他国のデータも交えてシミュレートする。この説がおもしろい。
1.そもそも先進国の他国は輸出国であり、食糧をほぼ輸入しかしていない日本の自給率と比較するのはおかしい。
2.日本の自給率が低いのは、人口密度が高いため。イギリスやフランスは日本の半分の人口で、土地は日本より多い。農業するための土地がある。翻って、日本は、小さい場所にたくさんの人が住んでいる。だから、食糧を外から仕入れるしかない。
3.食糧は今後、世界規模で余っていく。なぜなら、農業生産性は向上し、また、人口の増加率も逓減していく。
4.たとえば、日本が完全封鎖され、食糧を輸入できなくなったらどうするか。それは、そもそも、安全保障の問題。食糧を輸入できなくなる状態とは、国家が存続するための根本が成立しなくなっている。政治の力で回避すべき。
この説をおっしゃる方の気に入ったのは、農業全般に暖かい視点をもって論じているところ。農業で生産されるものは、他の生産物に比べて価格が安い。それは日本だけでなく、食糧輸出国のアメリカであってもフランスであっても同じ。だから、農家のひとたちの生活は楽ではない。だから、政策として保護すべき、という。
食糧自給率を上げようとするために多くの予算を使う必要がない、というのが
この方の主張。なるほどね。
ただ、たとえば、農家やるひとが全くいないのも、なんかこわいなーと思うので、そこはちょっとは居残るようにしてほしい。とはいえ、経済学的には比較優位ってことばがあって、向いてないことはやらないほうがいい、ともいえる。それを政治的に成立させておけば、別に、農家が国内になくてもいいのかもしれない(なくなっていいっていうんじゃなくて、目くじら立てなくてもええんじゃないの、くらいの意味です)。